たそがれのカツドウヤ 12大塚は、なじみがないではない。大学の近くから都電荒川線がでていて、その途中、山手線と交叉する駅のひとつが大塚だった。鉄道好きで、この電車もよくのった。 あさ9時20分ごろ、大塚駅に着く。角海老ボクシングジムのあるビルの脇をくぐりぬけて、しばらく歩いていたら後ろから声がした。 「あら、あなた新人だったわよね」 唯一の女性、ゴンダワラさんだった。きょうのいでたちも、これから女子大にいきます、といわんばかりの若作りのカッコウであった。 しかし、顔の感じは、どうみても50代近い。 「一週間、よろしくお願いします。」 殊勝なことを口にした。 青山の本社では、ゴンダワラに可愛がってもらってこい、と誰彼となくきかされた。別に、だからといってきにいられようとしたわけではないのだが。 倉庫につくと、メンバーはすでにそろっていて、パイプ椅子や、まるっこい椅子をだして、座り、コーヒーを飲んでいた。 所長のオオタは、ゴンダワラがドアをあけてはいってくると、たたんであった椅子をばたんとひらき置いた。 ロッカーに上着をかけ、作業着がわりのエプロンをすると、ゴンダワラはそのオオタが用意した椅子にドンとすわった。 シマザキは。マフネど競馬の話をしている。段ボールの上にスポーツ新聞がある。きのうあったレースの話題らしかったが、ついていけない、 9時半、そのとき、本社端末と直結しているプリンターが印字をはじめた。 「さ、やろう」 オオタが声をあげた。100メートルほどはなれた都電荒川線の軌道方面から、ガタンガタンと電車が通りすぎる音が聞こえた。 どんな1日になるのだろうか? ジャンル別一覧
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